ひまわりと天秤

 今年、私は弁護士になってから12年目を迎えます。
 これまでに、民事、刑事を合わせて400件を超える相談や事件処理に携わってきて
ある程度仕事への自信も付いてきました。しかし、それぞれの事件には常に固有の
新しい問題が含まれていて、いくら経験を積んでも、弁護士の仕事には慣れるという
ことがありません。
 私の事務所には、さまざまな理由から現在の社会の中で生きにくさを感じ、希望を
喪失している方が多く相談に来られます。中には、相談中に、「もう死んでしまいた
いですよ、先生」と言われることもあります。その意味では、弁護士というのは、精
神的にとても強いプレッシャーにさらされるきつい仕事です。
 しかし、きちんと依頼者に向き合って事件に取り組んでいれば、時には「先生の
ような方とお会いできて、自分ももう一度がんばろうと思いました」などと言ってく
れる方がいたり、服役中の男性から、「先生に大変お世話になったので、私も刑務
作業で点訳をすることにしました」などという手紙をもらうこともあります。そのよ
うな時、私は「弁護士になってよかったな」と、この上ない喜びを感じます。
 ところで、弁護士が法廷に行く際などに着ける「弁護士バッジ」には、ひまわりの
花の中に天秤の絵柄が描かれています。私は、弁護士の仕事というのは、様々な事件
やトラブルに巻き込まれたり、差別を受けたりしてぐっと下がってしまった依頼者の
天秤を、法律の知識や自分の人間性すべてを使ってバランスの取れた状態に戻すこと
だと思っています。経済的な損害を回復する必要があることもあるし、誰かに傷付け
られた心を共に分かち合うことが求められることもあります。
 弁護士になってから干支が一回りする今年、私は、弁護士を志したあの頃に抱いた
、依頼者の心に寄り添い、もう一度一歩を踏み出すお手伝いがしたいという夢を思い
出したいと思います。この夢は、空にかかる虹のように、どれだけ歩いても、決して
近づくことができない憧れなのかもしれません。でも、少なくとも、私は、ひまわり
のように、いつも空の高みを見上げていよう、2019年の年頭に当たり、改めてその気持ちを強くしています。

大胡田 誠